Sunday 15 July 2012

統計学における第一種・第二種過誤のまとめ。

前回の記事の続きです。第一種過誤と第二種過誤の違いについて説明します。といってもwikipediaに割りとそのまんまの記事があるのですけどね。

低レベルの放射線が人体に与える影響を検査した結果以下の2ケースの間違いを犯す可能性があります。

実際の状態
悪影響
無影響
検査結果 悪影響→対策をする(対立仮説) 正しい 第一種過誤
無影響→対策をしない(帰無仮説) 第二種過誤 正しい

もし統計学者が「低レベル放射線は人体に悪影響を及ぼす証拠はない」と言ったら、それはデータを解析した結果「第一種過誤が発生する確率が有意水準未満ではない」という意味です。有意水準はきっと5%に設定されてるのではないかと思います(あるいは10%かも)。従って、「実際には低レベル放射線は危険を及ぼさないのに、間違って無駄に対策を講じてしまう確率が5%(10 未満にならない。現状ではそうなる確率が高すぎる」ということです。

では第二種過誤の「実際には低レベル放射線は危険であるのに、間違って何も対策を取らない」確率は何%でしょうか?第一種過誤と違い、現状ではデータをどう解析したところで求められない値です。私の見た限りどの統計学の教科書にも必ずこの点について注意書きがありますが、例えばOkumura's Blogというページで指摘されるように学者でも間違える方がおられるようですね。
帰無仮説は棄却することはあっても「採択」してはいけないという注意は英語の文献ではしょっちゅう見かける。実際,Googleで "accept the null hypothesis" を検索すると,同様な注意がたくさん見つかる。
ところが,同じGoogleでも日本語で "帰無仮説を採択" を検索すると,著名な人でもこの表現を普通に使っていることがわかる。どうしてだろう。
つまり「低レベル放射線は人体に悪影響を及ぼす証拠はない」検査結果だからといって「人体に無影響である」と結論づけてはいけないのです。


第二種過誤が起こる確率を客観的に求めることができるケースは、被曝者への影響、例えば病気になる確率分布が既知の場合、言いかえると、十分にデータが集計されてこれ以上調査の必要がないという段階になった場合のみです。それ以前の段階である現状では、危険性について科学者それぞれが違う確率を信じて判断がバラバラになってしまうのも無理からぬことです。中には危険がないことに絶対の自信を持っている科学者もいると思いますが、それを証明する方法がなく、もどかしい状態と言えますその場合、信頼を得る方法は自分の信念に従ってリスクを取る他ないでしょうね。例えば、科学者自ら低レベル放射線の中で暮らして、自身が恐れていない姿勢を示すとか。
1964年完成の京都大学原子炉実験所の研究炉を建設した柴田俊一さんは、集落と研究所の中間に公務員宿舎を設けて、責任ある地位にある研究者はその宿舎に住むことを義務付けた。定員194名の研究所に対して75軒の宿舎を設けた。
福島原発事故由来の放射線にされされている住民の方々も、危険性について違った意見を持っておられるでしょうが、誰が正しくて誰が間違いかを科学が判断することはできません。何かひとつの正解が得られるということは今のところないです。よって、国・東電は、どのような信念を持った方(避難したい住民・原発近辺でも住み続けたい住民)にも対応するのが筋だろうなと思います。

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